
ALSについてよく聞かれる質問(1)
Q:ALSは遺伝する病気ですか?
A:
家族性のALSは非常にまれです。ALSの患者さんの直ぐ近くの身内(両親、祖父母、兄弟)の誰かに同じ様な発症者がいない限り子供に病気がでることは先ずないでしょう。
ALSとは異なりますが、運動ニューロン病に含まれる球脊髄性筋萎縮症や、子供のときに発病するウエルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルク・ヴェランダー病では遺伝性の疾患であることが知られています。

Q:食べ物は関係がありませんか?
A:
食べて悪いものはありません。蛋白質を含め、バランスのとれた栄養を十分にとって下さい。
飲み込みに問題があるようであれば、担当者(主治医、担当看護婦)に栄養の取り方について具体的に聞いて下さい。-
食事介助の工夫
-
食べ易く、むせにくい食事メニューの工夫
もし、食事量が低下したり、食事が終わらないうちに疲れてしまうようであれば、食間に高カロリー、高蛋白のスナックを取ることも良いでしょう。また、必要全量を必ずしも口から食べることに固執せず、チューブ栄養も併用すべきです。そのためには、胃瘻の造設がすすめられます。
飲み込みの障害に対する対策
いずれにしても、栄養が充分に行かないと、病気の自然経過のための筋萎縮による以上に痩せてしまい、手足の機能を落としてしまいます。
Q:何時も、ゆだれをたらしているのですが?
A:
ALSでは口囲、舌の動きと飲み込みが悪くなってくるので、唾液が口の中に溜まりやすく、そのために窒息感を生じるとともに、周囲からも流涎が多いように見られがちです。特に気管切開をされている方では流涎が多いことが頻回の吸引が必要になる原因となっており、この対策が重要です。しかし、唾液の分泌を少なくする薬を処方してもらう、テイッシュで口の中を拭く、ガーゼ1枚、あるいは薄いスポンジを噛んでいるなどと、あまり 良い対策がないのが実状です。
寝たきの方りは低圧で持続吸引をすると吸引の必要回数が少なくなります。

Q:おかしくもないのに、直ぐに笑ってしまうのですが?
A:
上位ニューロンの障害による顔面神経麻痺の症状として自分の意志に反して泣き顔、笑い顔をしてしまう(強制泣き、強制笑いといいます)ことがありますが、これは何も知的障害、精神障害のためではありません。周囲のものがこのことをよく理解している必要があります。

Q:会話が聞き取りにくいのですが、良い方法がありませんか?
A:
構音障害があると、言葉の内容が分かりにくいですが、根気よく聞き取ろうとしてあげることが大切です。また、そのことにより患者さんの口唇の動きを見て言っていることをある程度理解できるでしょう。可能であれば、筆記や文字盤(五十音字や数字を配列したもの)の指さしを兼用します。最終的には、コミュニケション機器を利用することになります。
コミュニケション機器とは?

Q:夫婦生活により病気は悪化しないでしょうか?
A:
ALSでは性機能に障害の及ぶことはありません。夫婦の絆、QOLの保持のためにも性生活は重要です。身体が不自由なので、体位をどうするかということが問題になりますが、 工夫すれば可能です。夫婦生活によって病気が悪化することはありませんので、安心して下さい。

リハビリはどの程度、やればよいのでしょうか?
A:
ALSにおけるリハビリの目的は、廃用性の筋力低下、関節拘縮を防ぐことにあります。筋肉に過剰の運動負荷をかけるとかえって筋力が低下することがありますので、柔軟体操を主として翌日まで疲労が残らない程度にリハビリを行って下さい。
一方、筋肉を使用しないと、かえって筋力の低下が強まります。歩けるうちは例え、呼吸器を付けていても毎日立って歩くようにした方がよいでしょう。また、頚の筋力を維持するためには時々ベッドを起こして座位に近くしたり、車椅子に乗ることが重要です。

Q:リハビリで呼吸機能がよくなりますか?
A:
呼吸機能は訓練で増強されることはありません。しかし、筋萎縮性側索硬化症では、頚や肩、背中の筋肉の力が落ちるため、それらの筋肉が動かし難くなり、それによって筋肉の動かせる範囲がせばまり、それがまた、いっそうの呼吸機能の低下する原因になります。呼吸筋のリハビリは、その様な二次的な障害(廃用症候群)を防ぎ、少ない筋力でも呼吸筋を動かしやすくするのが目的です。また、呼吸訓練は家族の方と一緒に憶えていただくことが大切です。痰をうまく出す方法として体位排痰法や咳の介助、体位変換、吸引などがありますが、主治医の指導に従って下さい。
肋間筋、体幹筋のストレッチングによる脊柱、胸郭の可動域訓練としては、
座位をとれる人は、



- 身体をひねって肘を上げる:両手を頭の後ろに組み、息を吐きながら軽く身体を横にひねり、前に来た肘を前上方に持ち上げる。手を組んだまま楽な呼吸をして身体を元の位置に戻す。反対側へ同じ動作をする。
<呼吸筋コンデイショニング研究会(代表世話人:本間生夫教授)の指導書より引用>
座位をとれない人に対する基本動作は、座位をとれる人の運動と同じですが、家族が手伝って以下の運動を毎日やって上げれば効果があるでしょう。
- 側臥位(横を向いて寝た位置)での胸と腰の回旋運動:
-
胸と腰を身体の向きとは反対の方向に回して上げる。その時、同時に上になった方の上腕も一緒に動かしてやると良い。
- 背臥位(上を向いて寝た位置)で吸気時に胸と腰を持ち上げてやる。
- 背臥位での体幹と肩胛帯の分離運動:
-
上半身と腰をそれぞれ反対方向に動かしてやる。
- 背臥位での肋骨の捻転:
-
吸気(息を吸うとき)に合わせて肩、上腕を頭の方向に引き上げる。呼気(息を吐くとき)に合わせて両手で胸を横から軽く圧迫して息を吐きださせる。
ALSのリハビリテーションで注意すべきこと

Q:病気の進行を少しでも遅くする方法はないのですか?
A:
現在、いくつかの薬が有望と言うことで、治験によりデータが取られています。しかし今、保険医療で使用が許可されている薬で病気の進行を止めることの出来るものはありません。
でも、病気の進行が遅いと思われる患者さんには、例外なく以下のような特徴があります。
- 生き甲斐を持って社会活動をしておられる。
- 毎日、手足を動かす努力(リハビリ)をされている。
ワープロを始めとして残存している手足の機能を最大限利用して活動されている。
- 栄養に気を配り、食べる努力をしておられる。あるいは胃瘻により充分な栄養をとっている。
- 生きることの希望を持っておられる。
逆に、これらのことに努めることが病気の進行を遅くする方法である、と言えるでしょう。
英国の理論物理学者、Stephen W.Hawking 博士は、ALSに罹患しながら長期生存している一人として有名です。54歳のホーキングは1963年、彼が21歳で英国のケンブリッジ大学を卒業した年にALSと診断されましたが、35年近くたった今でも現役として働いています(目次のホーキング博士の「身体機能の障害について」参照)。
ホーキングはALSと診断された後に、「宇宙の起源と性質」に関する有名な業績を成し遂げました。更に、結婚して3人の子供の父となっており、ALSでは知的能力も性的能力も損なうことがないことが判ります。

Q:長続きする介護のためのためのこつは何ですか?
A:
介護を長続きさせるためには、
- 安心してまかせられる協力者を数名見つけること。
- 自分一人で患者さんを支えていると思わないで、悩み事、困っていることなどを回りの人に相談すること。
- 身近にいる患者さんや患者の会など、介護者同志の情報交換も役立ちます。
- 時には福祉サービスなどを使って気分転換を図ること。
- バランスの良い食事と睡眠を出来るだけとること。疲れたら休養も忘れずに。
- 近所に、日常のちょっとした異常でも直ぐに相談の出来る家庭医を見つけておくこと。必要に応じて、専門医との連携がとれるように配慮してもらっておくと、何か困ったときに助かります。
(南九州医療福祉会偏の「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の闘病のしおり」より引用)
看護疲れで病人と共倒れにならないようにするには、どうしたらいいでしょうか?
ALSの介護経験者小山恵子さんに聞く

Q:ALSの患者が関節を動かすのを痛がり、体位の変換(寝返りさせること)を頻回に要求するのですが?
A:
私達は寝ている時、誰でもしょっちゅう寝返りをしています。もし寝返りをしないと、身体の下になっている部分が痛くなり、直ぐに床ずれ(褥創)が出来てしまいます。手足の麻痺のために自分で寝返りの出来ない患者さんは、どうしても介護者によって寝返り(体位変換)をしてもらう必要があります。この寝返り(体位変換)を頻回に要求されるということが、特に夜間の介護者の一番の悩みです。
ウェービングマット( 松下電工のVZ111)というコンニャク状のマットを用いると褥創が出来難く、ALSの患者さんに用いた場合には夜間の寝返りの要求も少なくなります。しかし、値段が非常に高く、車椅子に用いる30 cm四角で38,000円位、ベッド全面にしきつめるものでは約100,000円もするのが難点です。
Q:人工呼吸器を付けたままで、在宅療養することは可能なのですか?
A:
人工呼吸器を付けたままでも在宅療養をしておられる方は沢山おられます。
在宅療養をするためには、次のことを整えておくことが重要です。
- 肺炎、栄養障害などで具合が悪くなったとき、介護者の具合が悪くなったときに、直ぐに入院できる病院を確保しておくこと。
(現在、入院中の病院の主治医が在宅療養に向けて退院する前に手配してくれると思います。)
- 気管カニューレ、胃チューブの交換のために往診してくれる家庭医をつくること。
- 主たる介護者のほかに、部分的にでも手助けできる介護者あるいは、システムがあること。
(訪問看護ステーション、市町村ヘルパーの派遣、ボランテイアの利用などについては、医療ソーシャルワーカー、保健所の難病担当者と相談して下さい)
- 人工呼吸器(医療機関が医療機器会社とリース契約、保守契約をしたものを患者に貸してくれたり、県によっては直接人工呼吸器を貸与してくれるところもあります)、吸引器、アンビューバッグなど多少の医療器具、消耗品を揃える必要があります。
- 近くの消防署、電力会社などに病院、保健所を通じて患者の状態を知らせておきます。
在宅療養で人工呼吸療法を受けるには-
在宅人工呼吸療養ALS患者の生活の質に影響を与える因子
ALS患者選択肢

Q:停電などの緊急時には、どうしたらよいのでしょうか?
A:
急に停電しても、今のポータブル人工呼吸器には内部バッテリーがあり、30分以上は動きますので、慌てることはありません。また、人工呼吸器とは別に予備のバッテリーを備えておけば、3〜4時間は大丈夫です。
また、自動車がそばにあれば、自動車のシガレット用ソケットからコードを引いて呼吸器を動かしたり、吸引器を動かすことも可能です。普段から、そのような事故のことも考えて対策を考えておくと慌てなくてもすみます。
人工呼吸器が急に故障したような時には、慌てないでアンビューバッグを用いて手もみで人工呼吸を継続すればどんな長時間でも大丈夫です。介護者が一人しかいない時でも人工呼吸の回数を少し多めに(過呼吸の状態に)すれば、ほんのちょっとの間なら、席を外すことも出来て救急車を呼ぶことができます。
Q:人工呼吸器を付けているのに、呼吸が苦しいというのですが?
A:
先ず、気道内圧を示す人工呼吸器のメータが正常に動いているか、人工呼吸器のチューブ(じゃばら)類のコネクター(接合部)がきちんとつながっているか、チェックします(通常は、これらに不都合があれば呼吸器の警報が鳴ります)。
今は、簡単に血液中の酸素の濃度をチェックできる器械(経皮的血中酸素濃度SpO2)があります。SpO2が90以上あれば問題ありません。
人工呼吸器をはずして、アンビューバッグによる手動の人工呼吸を行うと自覚症状が軽減することがあります。
長期に人工呼吸器の管理下にあるALS患者に、繰り返す気道感染や、ファイテングの発生などのトラブルがあるとき、あるいは人工呼吸を行っていても呼吸苦を訴えられるような時には、1回換気量を増大することによって、自覚症状の軽減をはかることが出来て、問題が解決することがあります。
換気量=15 cc x 体重(kg)
すなわち、健常体重(標準体重でも可)50 kgなら、750 ccを1回換気量とします。
換気数=上記の1回換気量において、代謝代償される正常上限となるpHをもたらす数(概ねPCO2レベルとして20torr前後を目標に設定)
気道内圧上限=20〜30cmH2O
(大分協和病院呼吸器内科 山本真氏提唱)
加温加湿器は、温度調節が出来るようになっており、湿度の高いとき(雨天の時など)には温度設定を低く、湿度が低い(乾燥している)ときには温度設定を少し上げる必要があります。痰の固さによっても判断でき、痰が固く取れにくいときには温度設定を少し上げてやると良いですが、痰が水様となって量も多くなります。また、温度設定を高くしすぎると、吸い込む空気が熱風のようになり、苦しくなります。

Q:人工呼吸器を付けているのですが、食物を口から全く入れてはいけませんか?
A:
筋萎縮性側索硬化症の患者さんは、手足は全く動かせなくなりますが、全身の感覚は正常で、味覚も正常に味わうことが出来ます。嚥下が出来ない状態で、食物を口に入れることは嚥下性肺炎を起こしますので危険です。しかし、気管切開がしてあれば、気管カニューレのカフ(空気袋)でカニューレより上方からの唾液が気管に流れ込むのを防ぐようになっていますので、患者さんの好きな食べ物(コーヒー、羊かん、アイスクリームなど)を口に入れても危険は全くありません。
嚥下の筋肉と呼吸の筋肉とは別ですから、呼吸する力が弱くて人工呼吸器を必要とする方でも、咀嚼、嚥下がまだ可能な方は普通に口から食事をとっても何ら差し支えありません。
嚥下する力が弱いと、患者さんが自分の力で飲み込むことは出来ないかもしれませんが、舌の上におかれるだけで充分に食物を味わい、楽しむことが出来ます。ただ、口腔内の清潔の保持には、充分に注意して下さい。
どうぞ、受け持ちの医師、看護婦さんに相談して、患者さんが少しでも楽しめるようにしてあげて下さい。

Q:人工呼吸器を付けているのですが、最近、聴力が衰えてきたようなのですが?
A:
長期に人工呼吸器を使用していると、滲出性中耳炎のために耳が塞がった感じや、聴力の低下が生じます。鼓膜の奥の部屋(中耳腔)と鼻腔の奥の上咽頭とは耳管によってつながっており中耳腔の圧が調節されています。汽車で急にトンネルの中に入ったとき、耳がぼーんと少し痛くなるのは、外気の圧が急に変わって鼓膜が急に圧迫されるからですが、つばを飲み込むことによりそれが良くなるのは、空気が耳管を通り中耳に流れ中耳腔の圧と外気の圧が同じになるからです。気管切開がしてあると、呼吸によって空気が上咽頭を流れることがなくなり耳管が閉塞してしまうため、中耳腔の粘膜からにじみ出た浸出液が中耳腔内にたまってしまうのです。滲出性中耳炎の治療としては、投薬、耳管カテーテル、鼓膜穿刺で液を抜くなどの治療法がありますが、滲出性中耳炎はの原因(中耳腔の換気が悪い)が治らないので完全に良くすることが困難です。人工呼吸器を装着している場合には、耳鼻科医によって鼓膜に開けた小さな穴にチューブを留置しておくことが有効といわれています。ただし、鼓膜にチューブを留置してある場合には、入浴時などに耳の中(外耳腔)に水を入れないように注意して下さい。

Q:気管切開をしてるのですが、気管カニューレからの喀痰の吸引が頻回で、大変なのですが?
A:
嚥下がうまく出来ない ALS患者は、口の中に唾液がたまり、また、気管切開がしてあると気管の中にたまった喀痰も咳をして自分の力で喀出することが出来ないので頻回に吸引するように要求します。気管カニューレからの喀痰の吸引は、健康人がテイッシュで鼻をかむ行為のようなものですが、一日の回数が多いため、介護者にとって相当な負担となり、この吸引する人を揃えることが出来るかどうかが、在宅がスムーズに行くかどうかの決め手になります。しかし、気管カニューレからの吸引は医療行為とされますが、家人が日常的に行っている行為であり、少し練習すれば誰でも危険なく行うことが出来るので、個人的な了解を基として、ヘルパーさんや、ボランテアの方に行ってもらっている例が増えてきています。
A(2):
甲府の病院に入院中のALS患者の中島 貴祐さんのアドバイスです。(ALSメーリングリストより)
痰の吸引回数が多くてお困りの時は、私が6年半試行錯誤して発見した「痰を止める方法」を参考にして下さい。
私が使用しているカニューレは、ダブルカフで、太さが8ミリですから、貴方が使用しているカニューレと違っていましたら、参考に出来そうなのを試して下さい。
私の痰の吸引回数は、普段1日4〜5回で、消灯後から起床まで有りませんが、たまに月1〜2回は以下の処置をしても原因不明で、夜0時頃まで吸引が続く事が有ります。
- <痰を止める方法>
- カニューレのカフの中に注射器でエアー(空気)をパンパンに入れ過ぎると、痰が多く出るから、エアーを耳タブの柔らかさに減らすと、痰が止まります。
- 人工呼吸器のホースの中の水滴がノドに入り、むせた後、痰が出るから、ホースの中の水滴を昼間は母が3時間置きに、消灯後は看護婦さんが病室を回る3時間置きに、払ってもらっています。
- カニューレを固定する首のバンドをきつく絞め過ぎると痰が多く出るから、バンドを緩めに絞めています。
カニューレを首に固定するために私が用いているのは、紐ではなくて端にマジックテープの付いたバンドです。
- ホースの先端とカニューレを接続する部分が、ねじれているとカニューレが傾いて、痰が多く出るからホースをカニューレから外して、ホースの先端が垂直にカニューレに入る様に直しています。
私の場合、首にカニューレを固定しているのは紐ではなく、端にマジックテープが付いたバンドですが、紐を結ぶより楽です。
- 気管切開部のYガーゼを交換する時や、横向きで背中を拭く時に、どうしてもカニューレが動く刺激で、痰が出ます。痰の吸引が2〜3回で止まらない時は、カニューレを奥に押し込むと、痰が止まる事があります。カニューレが浮き上がるのではないかと思います。ホースをカニューレから外す時も、カニューレが浮き上がらない様に注意して下さい。
- どうしても痰が止まらない時は、カニューレのカフに入っているエアーを、もう片方のカフに入れ換えると痰が止まる事が良くあります。(ダブルカフの場合)
- 痰を吸引する直前に、カテーテルを消毒した液が吸引の時にノドに入ると、痰が続けて出ます。消毒液が痰として全て吸引し終わるまで、3時間位待つしか方法がありません。この時、口の中は消毒液の味がするから分かります。カテーテルを消毒した後、滅菌水で消毒液を良く洗い落としてから、吸引してもらっています。
- 先生が、カニューレを交換する時に、カニューレにキシロカインゼリーを沢山付け過ぎると、痰が続けて出ます。ゼリーが痰として全て吸引し終わるまで、6時間位待つしか方法がありません。この時、口の中はゼリーの味がするから分かります。カニューレの先端にゼリーを少し付けてと、先生にお願いしています。
以上の処置後、痰の吸引間隔の時間が長くなって来ると、痰が止まる前兆で、もう暫くの我慢です。
中島貴さん(山梨県)の「21年目のALS」

Q:気管切開をしなくても人工呼吸をする方法があると聞きましたが?
A:
人工呼吸療法には、鼻、または口から気管に管(気管カニューレ)を入れるか、気管切開手術を行って気管に直接管を入れて人工呼吸器につなぐ侵襲的な方法(TIPPV)と、鼻のマスクに人工呼吸器をつなぐ非侵襲的な方法があります。後者のNIPPV(経鼻間欠的陽圧人工呼吸法)のことをお尋ねのこと思います。
NIPPVは、鼻にマスクをきっちりと接合して人工呼吸する方法で、進行性筋ジストロフィーでは標準的な人工呼吸器療法となっております。BiPAPは、この一種で吸気の時に高い圧を、呼気の時には低い圧がかかるようになっており、ALSでも呼吸機能の低下し始めた初期の一時期には利用できることがあります。
筋ジストロフィーと人工呼吸:人工呼吸器の実際(国立療養所徳島病院)
BiPAPは、鼻閉のある患者、気道分泌物が多く、絶えず吸引の必要な患者では施行が困難であり、知能低下、非協力的な患者では鼻マスクが使用しにくい、鼻根部にマスクの圧迫による潰瘍ができやすい、などの欠点があります。そのためALS患者では自発呼吸があり、人工呼吸器がなくても一日の大部分を過ごせる患者に対して、呼吸筋疲労の回復、夜間の睡眠の改善などを目的として一時的に用いられることがあります。しかし、ALSでは進行性筋ジストロフィーと異なり、呼吸障害の来るような時期には嚥下も悪く、痰の喀出も困難のため、BiPAPを用いることができたとしても一時的で、何れは気管切開、TIPPVが必要となります。
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