
ALSについてよく聞かれる質問(2)
Q:気管切開していても声が出せると聞いたのですが?
A:
気管切開をして、人工呼吸器を付けると空気は気管カニューレのカフ(空気袋)でブロックされ声帯の方には流れないために、発語ができなくなります。でも、カニューレのカフの空気を抜いたときに呼吸器で送られる空気が声帯を通り口の方に流れるために声が出て話せる方がおられます。このような方では、Passy-Muirスピーキングバルブを付けると呼吸器を付けていても発語が出来ます。しかし、スピーキングバルブの使用には厳重な使用上の注意が必要です。
スピーキングバルブについて
(図はカタログより引用)
Q:便秘しやすいのですが?
A:
寝たままの患者さんは、どうしても便秘になりがちですが、少なくも3日に1回は排便があるように努力し、排便がなかったら下剤を服用するか、浣腸を行い、それでも排便がなければ摘便が必要になります。
便秘に対しては、
- 緩下剤の使用、具体的には主治医に相談して下さい。
- 朝の空腹時に水分200〜250 mlの飲用、または注入が有効です。スポーツドリンク(ポカリスェットなど)がすすめられます。
- お腹のマッサージ、「の」の字を書くようにしてマッサージして下さい。
- 線維の多い食品をとることも有効です。ゴボウを
軟らかくきざんだ食品(キザミ食)も発売されていますが、高圧鍋で煮た後にミキサーにかけることにより簡単に調理できます。
やわらかキザミ食
浣腸の仕方、摘便の仕方

Q:医療費、生活面での補助金制度はないのですか?
A:
医療費については「特定疾患治療研究事業」により、治療費の扶助を受けることが出来ます。
生活面の補助金制度は、住んでいる地域、障害の程度によって異なりますので、病院のソーシャルワーカーに相談されるか、保健所の担当保健婦に相談されるのが一番良いでしょう。
-
神経難病で利用できる福祉サービス

Q:ALSの患者・家族の会はありませんか?
A:
日本ALS協会という患者とその支援者の会があり、各県、各地域毎に支部を作って、患者交流会、講演会などの活動をしています。詳しいことは病院のソーシャルワーカー、保健婦さんなどに聞くと教えてくれます。日本ALS協会の近くの支部の事務局に直接連絡しても良いと思います。
日本ALS協会支部一覧
ALSのメーリングリスト

Q:人工呼吸器を付けたALS患者を入院させてくれる病院はありませんか?
A:
人工呼吸器を付けたALS患者の入院については、入院期間が長期になる可能性があること、家族の協力が絶対に必要なので、出来るだけ家族の居住地に近い病院が望ましいこと、また、出来れば在宅療養に移行した場合にも支援を受けるために訪問診療、訪問看護の出来るところが望ましいのですが、なかなかその様な病院を見つけることは困難です。1997年10月に厚生省の肝煎りで「筋萎縮性側索硬化症(ALS)全国医療情報ネットワーク」が作られました。それによって各都道府県に数カ所の「代表施設」が定められていますので、そこに相談されるのがよいと思います。勿論、「協力施設」として名乗りを上げている近くの病院に直接、相談されてもよいでしょう。しかし、残念ながら各病院の現状では直ちに入院、もしくは長期入院が可能な体制とはなっているところばかりではないこともご承知置き下さい。
ALS全国医療情報ネットワーク

Q:人工呼吸器を付けている患者がMRSAに感染していると言われたのですが、家族には危険はありませんか?
A:
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)感染症が、大きな問題となっています。MRSAは、ほとんどの抗生剤に耐性があるため、その治療には難渋し、重篤な状態を生じることもあります。一方、黄色ブドウ球菌は鼻腔、皮膚、咽頭の常在菌(病気でない人にも普通に住み付いている菌)でもありますので、ただMRSAが見つかった(MRSA保菌者)というだけならそんなに心配することはありません。また、普通の健康な方にとってはほとんど影響はなく、MRSAが検出されたから直ぐに家族が危険ということはありません。対策としては抗生物質を安易に用いず、消毒(アルコール消毒が有効です)を十分にやるだけで消えて行くことも少なくありません。しかし、病院の中には副腎皮質ホルモンを使用したり、手術をしたりして感染に対して抵抗力の弱くなっている患者さんもおられるため、MRSAは病院環境汚染の面からの対策が非常に重要であり、院内感染の予防を目的とした消毒を十分に行う必要があります。 そのため、菌の排出状況によっては病室を隔離されることもあります。-
MRSA院内感染防止対策マニュアル(国立療養所犀潟病院)

Q:ALSについて分かり易く書いた一般的な本がありませんか?
A:
一般向けの本としては、次のようなものがあります。
- 「ALS(筋萎縮性側策硬化症)マニュアル −ALSと共に生きる」
編集:アメリカALS協会、遠藤 明訳
日本メディカルセンター発行、 定価1,800円
- ALSをやさしく解説。患者本人、家族および患者のケアに携わる人々にもこの病気を理解しやすいようわかりやすくまとめてある。
- 次の「照る日かげる日」の解説も役立ちます。
また、患者さんの闘病記としては、次のようなものがあります。
- 「照る日かげる日:ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者たちの記録」(ジュデイオリバー編、日本ALS協会訳、サイマル出版会)
- 「いのち燃やさん:筋萎縮性側索硬化症と闘う」(日本ALS協会編、静山社)
- 「筋肉はどこへ行った」(川合亮三著、刊々出版)
- 「生まれてきてよかった:進行性筋萎縮症患者の生命賛歌」(難波紘一・幸矢著、著者住所:〒703岡山市平井4丁目18-30)
- 「しんぼう ― 死を見つめて生きる」(川口武久著、静山社)
- 「続しんぼう ― 生きて生かされ歩む」(川口武久著、静山社)
- 「残されし日をみつめて:ある難病患者の手記」(松村吉男著、風媒社)
- 「生命のコミュニケーション」(豊浦保子著、東方出版)
- 「いのちよありがとう:難病ALSとともに」(宮下健一著、信濃毎日新聞社)
- 「まぶたでつづるALSの日々」( 土井巍・土井喜久子 著 、白水社)
- 「つたえてください小指奮闘記」(比嘉栄達著、医師薬出版株式会社)

Q:ALSの専門医療機関と一般の神経内科医の診療とで何か違うところがあるのですか?
A:
ALSの専門医療機関と一般の神経内科医とでは診察自体に何ら変わるところはありません。しかし、「ALS患者をケアできる施設」とは、単に神経内科医であるというだけではなく、
- ALSを正しく診断できること
- 病状の進行に遅れることなく、次に起き得る症状とその対策について予めきちんと
告知できること(インフォームドコンセント)、
- 患者が希望するなら、最後まで(気管切開、呼吸器の使用、在宅療養の援助など)責任を
もち、患者、家族のQOLの確保(コムニケーションエイドの利用、福祉情報など)のた
めに努めていること、
が、最低限の条件かと思います。

Q:飲み込みがむずかしくなり唾液がとても多く溜り、口の中の吸引の回数がとても増たのですが?
A:
唾液の分泌を抑えるために、ロートエキスの様な薬を使用することもありますが、このような薬剤は唾液以外にも全ての分泌を抑えるので、喉が乾き、痰が硬くなり、便秘しやすくなります。
それよりも、唾液を低圧の吸引器で持続的に吸引するやり方の方がずっとよいと思われます。
詳しくは
低圧持続吸引器の説明
(参考)鈴木順美、ら:在宅ALS患者の流涎対策、在宅用低圧持続吸引器の作製。ブレインナーシング、15: 53-56,1999.

Q:口臭が気になるのですが?
A:
口臭の原因は、歯周病、齲歯(むしば)など歯に原因のあることが多いので、毎日、食後に歯と歯ぐきのブラッシングをしましょう。
寝たきりの方の口腔内のケアの仕方については
-
口腔内の清潔の問題
歯のほかに舌苔が原因のことも多いので、舌の表面もブラシで軽くこすって清潔にしてやる必要があります。
舌苔とは
- 高齢者は唾液の分泌が少なく、また薬剤のために唾液の分泌が少なくなることもありますし、酸素吸入をしたり、ALSの方のように口から食事を経口的に摂れなくなると口の中が乾燥することがああります。舌の表面はひだ状になって表面の粘膜が面が絶えずはがれて唾液により清潔なピンク色をしています。舌が乾燥する(唾液が少なくなる)と舌の表面は、はがれた粘膜と細菌が増殖して分厚く付着して白っぽくなり、メチルカプタンなどを出して悪臭の原因となります。
舌苔の除去には
- 1日1回、舌をガーゼでつまみ出して柔らかい歯ブラシで舌の表面を4〜5回こすり、舌苔を取り除きます。舌苔が厚く取れにくいときには無理に取ろうとせず、オリーブ油やサラダ油をしみ込ませた綿棒で舌を拭き、10〜20分してから軽くこすると取れやすくなります。
また、2倍希釈オキシドールでこすっても取りやすくなります。

Q:指が動かず、ナースコールが押せないのですが?
A:
手指の筋力が低下し、呼吸器も使用しているとすると、家族を呼ぶためのナースコールを押すことも困難になります。しかし、足が動くなら、足でスイッチを操作するようにすることもできますし、首の少しの動き、額のしわ、舌の動きなど色々な筋肉の動きをスイッチの動作に使うことが出来ます。具体的には、何処の筋肉がどのように障害されているか、作業療法士などの専門家に診てもらい、最も適当なスイッチを選ぶ必要があります。主治医、保健婦などに先ず相談されてみては如何でしょうか。
Q:上肢の筋萎縮が強くなり、肩関節の痛みを訴えるのですが?
A:
筋肉が萎縮してくると、関節が動かなくなり、そのために拘縮(関節の動く範囲が狭まること)をきたし、痛みを生じてきます。関節の痛みを防ぐには、
- 関節の拘縮を防ぐこと。そのためには毎日関節を動かしてあげるのが良いでしょう。介護者が仰臥位の肩関節を動かしてげるときは、手のひらを内側に向いているような位置にしたまま上下に(身体の前方に)動かしてあげることが重要です。
- 関節を無理に動かすのは禁物で、他動運動は痛みを与えない範囲で繰り返して動かしてあげることが重要です。
- 関節をホッカイロなどで暖めてあげることも役に立ちます。
関節痛以外に、筋肉が萎縮してくるとき筋肉のだる痛みという形で痛むことがあります。これも、筋肉を他動的に動かしてあげることが役立ちます。

Q:目が充血して痛がるのですが?
A:

ALSの患者さんでは、瞬きが少なかったり、弱かったりするために眼の表面が乾燥しやすくなります。また、目に見えないような小さなゴミが入って眼の表面(角膜)を傷つけてしまい、炎症を起こして眼が充血してしまうことも少なくありません。点眼液や眼軟膏で保護してあげることが重要です。また、甚衛アイマスクをつけることも有効です。
*「甚衛アイマスク」
非常に軽いプラスチックの透明なゴーグルです。考案者は、日本ALS協会新潟支部の鈴木甚衛さんで、5枚一組送料ともで千円だそうです。
希望者は日本ALS協会新潟支部の若林 さんにご連絡下さい。
TEL 025-267-1888 FAX 025-267-1888
甚衛マスクの紹介

Q:流動食を注入すると動悸がするのですが?
A:
流動食の注入の速度が速すぎると、一時的に動悸がすることがあります。動悸がするようならば、流動食の注入速度を少し遅くし、ベットのギャジアップを下げておくと間もなくおさまります。また、人工呼吸器を使用している方ならば、換気量を少し上げる(1回換気量または換気回数)のも良いようです。

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