全身の栄養管理に努め、対症的に治療されているのが現状です。しかし、運動神経細胞のみが選択的に障害されるということから、原因に関して様々なことが考えられており、それに基づいた治療薬が開発され、米国を中心として世界中でその有効性の評価が検討されております。
| 薬剤作用 | 薬剤名 | 投与方法 | 日本での状況 | 欧米での状況 |
|---|---|---|---|---|
| グルタミン酸の作用の抑制 | riluzole | 経口 | 承認(やや延命効果がある) | 承認 |
| gabapentin | 経口 | (−) | 第3相試験終了、有効性なし | |
| LY300164 | 経口 | (−) | 第2相試験から開発中止 | |
| NAALADase | 経口 | (−) | 臨床試験前段階 | |
| topiramate | 経口 | (−) | 14施設で二重盲験試験中 | |
| 神経栄養因子の補充 | SR57746A | 経口 | 第2相試験登録終了 | 第3相試験登録終了 |
| r-metHuBDNF | 髄注 | (−) | 開発中止 | |
| r-metHuBDNF | 皮下注射 | (−) | 開発中止 | |
| r-metHuGDNF | 髄注 | (−) | 試験中止 | |
| IGF-1 | 皮下注射 | 第3相試験終了 | 第3相試験終了 | |
| neuroimmunophilins | 経口 | (−) | 第1相試験中 | |
| 神経栄養因子調整 | AT-082 | 経口 | (−) | 臨床試験前段階 |
| 抗酸化作用 | Co-Q10 enzyme | 経口 | (−) | オープン試験中 |
| 筋代謝改善 | creatine monohydrate | 経口 | 小規模試験 | 二重盲験試験中 |
| 神経毒素阻害 | methylcobaramin | 筋注(大量) | 小規模試験 | (−) |
健常筋を強化する
効率的な起居動作の指導(住宅改造の指導)
自助具を活用するなど、日常生活動作の指導
各種装具を活用する
短時間の訓練と休息が重要(過労にならない)
姿勢矯正 と呼吸訓練を行う
移動の動作と介助方法の指導(転倒対策)
呼吸・排痰訓練を行う
関節可動域維持と車椅子の活用により残存機能の維持を図る
胃瘻、気管切開
患者の状態に合ったコミュニケーションの方法を指導する。
ALSにおけるリハビリの目的は、廃用性の筋力低下、関節拘縮を防ぐことにあります。
筋肉に過剰の運動負荷をかけるとかえって筋力が低下することがありますので、柔軟体操を主として翌日まで疲労が残らない程度にリハビリを行って下さい。
関節可動域訓練とは、関節が硬くなって動き難くならないように、あらゆる関節を充分に屈曲伸展を繰り返してあげることです。この関節可動域訓練は毎日、行っていることが重要です。放って置くと、あらゆる関節が拘縮をきたして、 硬くなり伸びきったままで曲がらなくなってしまいます。そうするとベットに寝たままで、車椅子に乗せることも困難になってしまいますし、更衣、トイレ動作などの介護も大変になってしまいます。。
特に、ナースコールを握っている手は指が屈曲して曲がったまま固まりやすいので毎日伸展させるようにROM訓練をする必要があります。
また、関節可動域訓練を行うことで、関節、筋肉の疼痛を軽くすることが出来ます。
姿勢の矯正、補助呼吸筋の強化: 肋間筋、体幹筋のストレッチによる脊柱、胸郭の可動域訓練です。具体的な方法については、理学療法士の指導を受けて下さい。
呼吸運動の練習とともに簡単な言葉を発する練習をすると、言葉に対しても、嚥下運動に対しても良い影響があります。
排痰訓練: 誤嚥性肺炎の予防と体位排痰法の指導です。
対症療法としては
頚の筋力が低下すると、座位になると頚がぐらぐらと不安定になり、頚の痛みが生じます。また、座位ではいつも頚が前屈しているために余計に息苦しくなったり、飲み込みにくくなったりします。写真のような頚装具を付けると頭の位置が安定し、頚の痛みも軽くなります。
筋力の低下の範囲、程度に合わせて、種々の補助具が用いられます。具体的には、医師、作業療法士にお尋ね下さい。
例えば、
噛む力、飲み込む力が弱くなると、むせやすくなり、誤嚥によって嚥下性の肺炎をを起こしやすくなります。
誤嚥を生じないように、食事をきざみ食、トロミ食、さらにはミキサー食へと変えて行く必要があります。
嚥下障害の軽いときには、抗コリンエステラーゼ剤のメスチノンの服用により、一時的に改善することがあります。
誤嚥が多く、経口的に食事の摂取が出来なくなれば、経管栄養法により流動物の形で食事を胃に注入することになります。方法としては、鼻から胃まで管を通す経鼻的胃カテーテルと、腹壁から直接胃に管を入れる胃瘻、腸瘻などがあります。何れにしても、この病気は非常に慢性の病気なので中心静脈栄養法など静脈注射の形で栄養補給するのは通常の場合には不適当です。
口から食べることにこだわり、経管栄養を拒否される方が少なくありませんが、食事にむせやすくなった時期には口から外にこぼれる量も多くなっており、経口的に充分な栄養、水分をとることが不可能になっています。
体力を温存し、 病気の進行を遅らせるためには、口から食べることにこだわるよりは、なるべく早い時期に胃瘻を作り、そこから充分な栄養、水分の摂取を行いつつ、口からは量にこだわらずに患者さんの本当に好きなもの(コーヒー、甘味物、アルコールなど)を楽しんでとるようにした方が良いのです。
嚥下障害が生じると、唾液を飲み込むことが出来ないために唾液が口の中にたまり、口角より溢れ出るのが、患者さんにとって非常な苦痛になります。これを解決するには、低圧持続吸引器で口中の唾液を吸引することにより解決できます。
家庭用水層エア・ポンプを改造して作る唾液吸引機の製作方法の紹介
舌、咽頭筋の麻痺により次第に発音が不明瞭になって、第三者には聞き取りにくくなっていきますので、文字盤の使用や、コミュニケーションボードによるYES/NO反応によってコムニケーションをとることになりまが、介護者の側の根気よく真剣に聞くという気持ちが重要です。
また、近年、コンピューターの進歩、価格の低下もあり、いろいろの意思伝達装置が開発されています。患者さんの残存機能を上手く利用してスイッチを操作することにより、環境制御装置(テレビを付け、チャンネルを切り替える、ワープロを操作する、ナースコールを押すなど)を操作することもできます。
呼吸筋の筋力が低下してくると、肺活量が少なくなり、換気が充分に行われないために血液中の炭酸ガスが増え、頭痛が生じます。その頃には、嚥下も上手くできなくなっているので、唾液が咽頭にたまり、絶えず唾液、喀痰の吸引を行わなければならなくなります。
気管切開をしておくと、喀痰の吸引も楽に出来、一時的には呼吸も楽になり、呼吸困難など緊急の時にも簡単に人工呼吸が出来ます。
換気量が低下している状態で、風邪など気道感染を生じると急に呼吸困難となることがあります。
換気が充分に出来ない状態で高濃度の酸素を吸入させると血液中に炭酸ガスが急に増えるため麻酔状態となり、意識が低下します。
換気量を上げるためには人工呼吸器の助けが必要になります。
人工呼吸器には、
筋萎縮性側索硬化症では、一度、人工呼吸器を装着すると、それから完全に離脱することは非常に困難であり、長期の呼吸器管理下の療養生活が続くことになります。従って、人工呼吸器を装着する前に、人工呼吸器を付けて生きることについての充分なインフォームドコンセントをとっておくことが絶対に必要です。
充分なインフォームドコンセントなしの呼吸器の装着は、 患者さんに意欲を失わせ、その後の療養を非常に困難にします。
急に呼吸困難となって意識が低下し、救急室で患者、家族に説明もないまま人工呼吸器を付けてしまい、患者の側から「意識が回復したら知らない間に呼吸器が付いていた」といわれることは、出来るだけ避けなければなりません。