在宅時の患者の流涎(ゆだれ)対策
(エアポンプ改良型低圧持続吸引器の使用)
人工呼吸器を必要とするような筋萎縮性側索硬化症の患者は、球麻痺のために唾液がのみ込めず、唾液が口角から流れ出てしまうが、四肢麻痺のために自分ではふき取れず、首の周囲が常に汚染されている。首にタオルを巻いて汚染の拡大を防いでいても不十分で、時には衣類まで汚染することがある。また、唾液が常に口中にたまっているために苦しくなり、口腔内の吸引を数分おきに希望するので、そのことが家族の介護負担を非常に大きくしている。持続的に唾液を吸引できれば、家族の介護負担が非常に軽減する。しかし、通常の卓上・携帯型吸引器は高価でもあり、モーターが発熱するために連続使用も不可能である。これを解決するためには、家庭用の水槽に使われているエアポンプを吸引用に改造して用いると良い。エアポンプは、モーターを使用せず、磁石の上下運動により ポンプを操作するが、機械の内部の弁を付け替えて空気の流れを逆に動かし、本来は空気を送り出すエアポンプを、吸引を行なう器械に改造する。改造は簡単である。

改良前のエアポンプ:斜線部分はゴム、磁石の上下運動によりゴムを連続的に押し、空気の流れ(→)を作る。BとCの弁は、矢印の方向へ一方通行でしか開かない。

改良後:図1のBとCの弁をAとDの位置に付け替え、空気の流れ(→)を逆にした。

完成した低圧持続吸引器

低圧持続吸引器を使用中の患者ネラトンのカテーテルを用いると口の中を傷つけない。
- 機器について:
操作が簡単で電源を入れるだけで作動し、唾液が十分に吸引できる。また、モーター使用でないため加熱せず、長時間の使用が可能であり、音も静かである。価格は、元のポンプの購入額が1000円前後と安く、その改造費もほとんどかからない。電気料は1ヵ月の連続使用でも100円以下である。吸引力については、吸引瓶の大きさや器械に接続するチューブの条件により、変化が見られ、吸引瓶の容積が少ない方が吸引力が強く、接続チューブについては、基本的には長さや太さを変えても吸引力には変化が見られない。
- 使用した患者・家族からの評価:
患者さんからは『首がいつも濡れていて死ぬほど苦痛だったのに、唾液の量が気にならず、濡れが少なくなった。以前より快適な生活が送れるようになった。』という意見が聞かれた。家族からは、『吸引回数が減って、患者に付きっきりの時間が少なくなり、楽になった。』『気持ちに余裕ができた。』などの声が聞かれた。また、ある 介護者からは、『今までで全く出来なかった外出も30〜40分位可能になり、睡眠については3〜4時間位の熟睡が出来るようになった』と評価された。
- 発表論文:
鈴木順美、高橋いま子、峰村勇一、袖山千恵子、船崎美子、高橋ひで子、福原信義:在宅ALS患者の流涎対策に関する研究ー在宅用の低圧持続吸引器の作製、Brain Nursing, 15: 53-56, 1999
-
低圧持続吸引器の改造費用について
| 水槽用エアポンプ(ニッソーNα4000) | 1個 | 1,480円 |
| プラスチックのビン | 1個 | 347円 |
プラスチック管 (スドーララックスチューブ) | 3本 | 150円 |
| 接続コネクター | (100個入り1箱が20,000円)
|
| (アーガイル・チュービング・コネクター) | 1個 | 200円 |
カテーテル: | |
| ネラトンゴムカテーテル(6号) | 1本 | 600円 |
| サフィート吸引カテーテル(テルモ製) | 1本 | 50円 |
| 人件費 (1個あたり) | | 500円 |
| 合計 | | 3,327円 |
以上の説明では、低圧持続吸引器のためのエアポンプの改造が上手くゆかない方は、ご連絡下さい。
e-mail: fukuhara@saigata-nh.go.jp
家庭用水層エア・ポンプを改造して作る唾液吸引機の製作方法の紹介(吉田直樹さんのHP)