III−3 英国のホスピスにおける緩和ケアと難病医療

聖クリストファーホスピス 看護婦 阿部 まゆみ

54才の大学教授であるジョージ氏は“私の信じることは自分でできる範囲で今この時を人間としてどのように生き、私は何であるかを問いながら生き続ける”と言い、多くの人々に支援されながら週2回のデイケアに参加し、MNDである彼は足で自画像を描くことに熱心である。出来ないことで嘆くことより、今使われている機能を充分に使い障害のあることが人々との壁にならないようにと一生懸命に生きている。彼らが医療者に望んでいることは、ひとり一人の人間として尊厳あるまなざしと彼ら独自の人生を自分でコントロールできること、自分の人生が何らかの形で役立っていると感じられることであり、彼らの人生を支え思いやりと良きパートナーとして存在しながら援助していくことである。
人間の生命は時間の長さ(量)ではなく、その意味や価値観などの質的な要素も大切で、病を持ちながらも最後まで尊厳を保ち、患者の肉体的・精神的・社会的・感情・情緒的苦痛緩和につとめると同時に生きてゆく過程でのQOLの改善につとめるべきである。
私たちは社会の中で病をもつということを再認識し、医療のめざすものは社会の中でかけがえのない唯一の個人として生きている人々に対し健康な状態が維持されることと、疾病をもった時に診断・治療・看護を通しながら患者自身がある程度、主体的・自律的な生き方を確立し、最後まで生を全うできるよう援助していくことである。
英国医療の中でホスピス、緩和ケアの役割と広がりについて歴史的な側面からマックミラン ナース・サポート チーム ナースとして病院・地域で活躍しているスペシャリスト ナースについてと告知の実際について、1人の女性の生きざまと家族、医療者との関わりを通して、患者の求めている安楽と精神的な安らぎを得ることの大切さ、彼女にとってのスペース・タイム・ホープを保ちながら医療者がどのように受けとめ、維持し援助したかも含めて医療の原点に立ち英国滞在の中での学びと経験から述べたいと思います。