III−4 難病患者・家族の心理と援助のあり方とその問題点

国立療養所犀潟病院 心理療法士 後藤 清恵

医療人類学の基本原則すなわち「“疾病”とは生物学的プロセスと心理学的プロセスの両方あるいは一方の機能不全を指し、“病い”とは知覚された疾病の心理社会的な体験のされ方や意味づけを指す」(Kleinman,A.1992)に基づき、さらに「病の概念には、とりわけ家族や社会的ネットワークの内部のコミュニケーションや相互作用が含まれる」(同上)という視点で難病患者、家族の援助について報告したい。
難病患者を理解する上で、次の2点が重要である。一つは、自尊感情の喪失である。自尊感情とは、簡単には、“自分はまあまあだ”と思う気持ちのことで、発病によって、それまでの自分や家族、社会的地位など、同一視し依存してきたものを失う危機に直面して、自尊感情が揺らぎ、低下し、時に失われる可能性が多大であると考えられる。
二つめは、部分的悲哀(partial grief)である。予期による悲哀とも言える。即ち病気の重大さを告げられる前に、それに薄々気づくことを指す。患者は、長い闘病生活と症状の進行を体験する中で、“不治”と“死”への恐怖と否認の葛藤を経験している。それゆえ、援助は、“患者が体験している状況の違和感”と“まさにそれが自分自身に起こっている事実である”という二重性に対して工夫される必要がある。
患者の家族にはさらに次のことが言える。患者の出現による家族危機である。危機時は日頃の家族内コミュニケーションのあり方が試されるときであるが、そこで問題となるのは家族内コミュニケーションの阻害である。家族言語(家族の世界の見方)、家族ルール(家族が相互作用のために採用している態度や価値観)、などを把握した上で、情緒と情報のコミュニケーションが過不足なく行われるように援助が必要であると考えている。