III−1 ALSの告示の問題(呼吸器装着の問題を含めて)

東京都立駒込病院 神経内科医長 林 秀明


ALSの臨床病理学的所見は発症2〜3年で生じる呼吸筋麻痺をターミナルとして確立され、医師は、「NO-CAUSE(原因不明の疾患),NO-CURE(治療法のない疾患),NO-HOPE(希望の持てない疾患)」として、病気を家族のみに話し患者自身には知らせないようにしてきた。
しかし、ここ20数年の呼吸器装置の実践から呼吸筋麻痺後の長期療養が可能となり、 ALSの呼吸筋麻痺はALSの一つの症状で、病気の一進行過程であり、ターミナルではないことが明らかとなった。ALSの呼吸筋麻痺が、即「死」を意味しなくなったので、呼吸筋の麻痺する前に、患者自身に呼吸器装着の問題を含めて病気を知らせることが必須となっている。ALSの各筋群麻痺の発症や進行の個人差、早期呼吸筋麻痺の存在、緊急時呼吸器装着頻度の高さから、ALSの診断が確定した早期に知らせるのがよい。
ALSの告示は呼吸筋麻痺がALSの一つの症状であるという「新しいALS観」で、現在の症状及びこれから起こりうることが了解できるように話し、ALS患者を慢性進行性で早晩死に至る不治の患者でなく障害を持った人と考え、人的・経済的・社会的に生活していくのに厳しい現状から、ALS患者が普通の人と同じように生活していけるように、社会に一員として、皆と、具体的に社会に働きかけていかなければならない現状にあることを理解してもらうようにしていくことが必要である。そして、単に情報を伝達するのではなく、情報を共有できる互いに交流しあった関係で行い、新たな状況の変化に対し患者・家族とその都度一緒に判断できる信頼関係の確立が大切である。
ところで、呼吸筋麻痺がALSのターミナルではなくなった現在、ALSの呼吸器装着の問題は、ALSそのものの問題から、厳しい障害を持った人の生命を如何に考えるかの問題に変わってきていることに留意されなけれがならない。