III−2 筋萎縮性側策硬化症(ALS)のインフォームド・コンセント
1. ALSの障害と段階的告知
ALSは脊髄・脳幹の運動ニューロンの変性により起こる全身性の進行性筋萎縮性疾患であるが、リハビリテーション医学の障害(disability)としてとらえると運動・コミュニケーション・嚥下そして呼吸障害の4点に集約される。当院では患者・家族・遺族のアンケート結果から診断後なるべく早期に、運動・コミュニケーション・嚥下の3障害について告知(第1段階告知)し、病気は治らなくても障害に対する治療法はあることを説明する。その後ある程度病状が進行してから呼吸障害に触れ、気管切開や人工呼吸器について告知(第2段階告知)する段階的告知を行ってきた。
2. 社会的側面の説明の内容
呼吸障害について説明するときには病気のことを説明するだけではなく、人工呼吸器療法に伴う社会的側面についても併せて説明している。当院で人工呼吸器療法をサポートするためには、
@ 自宅療養が基本であること
A 自宅療養を行ったときの介護者の介護時間(少なくとも8時間以上)
B 人工呼吸器療養に伴う経済的側面について
C 自宅療養中の病院のサポート体制について(緊急入院と家族介護力充電のための定期的なショートステイ等)
以上の内容の社会的側面を説明し、気管切開や人工呼吸器装着などの医療処置を受けるかどうか患者本人に自己決定をしてもらっている。最近は約半数の患者さんが人工呼吸器のサポートを希望されている。
3. 社会的側面の説明に対する遺族の意識
当院で社会的側面の説明を加えたインフォームド・コンセントを行い、1994〜1995年の2年間に呼吸不全に陥り、本人が延命を希望しなかった8遺族に我々のインフォームド・コンセントの是非について調査したところ、遺族も社会的側面の説明を含めたインフォームド・コンセントが患者・家族の両方に必要と答えた。現在の医療環境下ではインフォームド・コンセントを行う際、病名や病態の告知だけでなく、延命のための医療処置後の在宅療養に際して家族の介護時間や療養費等の経済的要素も含めた社会的側面の説明は、療養方針を決定するために有用と思われる。しかし患者が人工呼吸の装着の自己決定に際し、経済的問題や介護力などの社会的側面の影響を受けていることは考慮すべき点であると考えられる。
最近、国立療養所神経内科協議会を通じて神経内科医がどのようにALS患者に告知を行っているか調査したのでその結果も合わせて報告する。