I−3 ALSの長期入院療養:あるべき姿

都立神経病院 神経内科医長 加藤 修一

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者がコミュニケーション障害や呼吸筋麻痺を抱えながら長期療養していくためには、問題を抱えながらも安定した生活の場が必要である。また、患者だけでなく、介護する家族の過重な負担をどう軽減できるかも大切な課題である。
生活の場として、在宅診療を希望する患者が多いが、介護者の減少、過労、罹病、高齢化などから、ある時期には入院を希望することも少なくない。短期間の入院で在宅診療に戻ることもあるが、一定の長期間や生涯にわたる入院を保証する必要も出てくる。さらに患者自身がもともと在宅診療を希望しない場合や、一人の生涯の中でそれを希望しない時期もある。
長期入院については、合併症は迅速に治療しながらも、ALSについて患者が十分に説明を受けながら、文字通り生活の場として成り立っていることが望ましく、それだけの空間と設備、マンパワーを要する。呼吸管理が特殊な手法でなく、日常の普通の処置になっている必要がある。また、麻痺の広がりや眼球運動制限などの症状には個人差があるので、個々の多様な症状に対応できることが望まれる。かつ、症状だけでなく、患者の多様な人格に対応できるだけのスタッフの数と意欲が大切である。さらに、患者に不安感や孤独感を生じさせる原因の一つがコミュニケーション障害にあるので、患者から何とかして話しを聞きたいと願うスタッフが与えられたい。終末期には、ターミナルケアの場としての役割もある。
根本的な治療法が開発されていない現在でも、多くの長期療養ALS患者が生き生きと暮らしている様は厳粛さを感じさせるものがある。苦難がなくなることだけがゴールではないこと、そして、苦難の中にあっても人は輝くことができることを教えられる日々である。このあたりに、ALS長期療養の一つの鍵がひそんでいるのかもしれない。