IV−2 神経難病患者用QOL評価尺度の開発と地域における難病患者への適用

国立公衆衛生院 疫学部長 簑輪 眞澄 共同研究者: 藤田利治*1星野明子*2,篠崎育子*3,信野左千子*4,尾形由起子*5,飯塚俊子*6 *1国立公衆衛生院疫学部 *2新潟県新津保健所 *3東京都武蔵調布保健所 *4奈良県葛城保健所 *5福岡県朝倉保健所 *6新潟県立上越テクノスクール

【QOL尺度の開発】神経難病患者のQOLを、@病気の受容、A満足感、およびB志気と規定して設定した87の質問項目(item-pool)をもとに、新潟県新津保健所、東京都武蔵調布保健所および奈良県葛城保健所管内の筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症およびパーキンソン病の患者のうち、医療費公費負担受給者を対象に郵送法による調査を実施した。その結果の分析にもとづき27項目から成るQOL評価尺度を開発した。信頼性の検討としては、内的整合性および再現性を検討した。各項目とQOLの得点の相関係数は概ね高い値を示し全項目を用いて算出したα係数は0.871であり、高い内的整合性を示した。予備調査と本調査で重複した対象のQOL得点間の相関係数は0.854と高く、高い再現性が確認された。妥当性については、概念に基づき導かれた領域と、因子分析の結果が一致したことで構成概念妥当性が確認された。QOLの得点と症状やADLなどとの間に中等度の相関がみられたことから、この尺度によって評価されたQOL得点はそれらの影響を受けないながらも、一応独自の意義のあるものであることが示唆された。
【地域における神経難病患者への適用】上記3神経難病患者の主観的QOLに伴うさまざまな要因(機能水準を含む)を検討することを目的とし、既存情報の収集と訪問面接を含む断面調査を行った。対象は、平成7年9月1日現在、新潟県上越保健所と、福岡県朝倉保健所、京都保健所および築上保健所の4保健所で把握していた、上記3難病の医療費公費負担受給者とした。主な結果:(1)機能水準(Barthel IndexおよびFrenchay Activities Index)で調整された主観的QOLは、入院中の患者、労働の意志があるにもかかわらず働けない患者、経済的不安のある患者、コミュニケーションの手段として文字盤や機器を利用している患者(言語不明瞭者のみ)で低く、保健所間に差が見られた;(2)性別、年齢、疾患、罹病期間、家族構成、保健福祉サービス利用状況、医療機器利用状況等とは有意な関連がみられなかった。次のような結論が得られた:(1)神経難病患者のQOLを維持するには、機能水準を保つとともに、在宅療養や必要に応じて労働の機会を確保することが必要である:(2)定期的にこの様な調査と分析解析われる必要がある。