I−4 米国におけるALS医療の現状
クリーブランド・クリニック 三本 博
米国での医療の特徴は、専門医制と紹介制度、医療機器への高度依存性、そして病院・医師間での実力・競争主義にあるといえる。
ALSの医療においても、患者は保険の許す範囲で広域により良い専門医・ALSクリニックを探し求め、ALSクリニックも、その内容を充実し、最近目まぐるしく展開されつつある臨床治療試験に参加出来るべく努力している。しかし、米国は国土も広く、神経内科開業医の中には、年にALSの患者をほとんど診ることのない場合もあり、ALSの知識も限られていることも希ではない。その上ALSの専門医間でもその治療に対するアプローチが異なることもあり、今年になって米国神経内科学会はALSの治療指針の作成を始めた。
ALSのような根治療法のない、原因不明の進行性難病では、患者のQOLを改善することが治療の主体となる。我々のセンターは、米国ALS協会が最初に認定したセンターの一つで、年間250人以上のALSの新患患者を診る一方、週一回のクリニックでは5〜7人の再来患者を診察する。ALSの治療は診断告知に始まり、最大限の対症療法、各種治療士と共に、疾患のみに対してではなく、あらゆる面より、家族を含めての全体治療を行なっている。呼吸補助器使用・経管栄養の為、呼吸器科医・消化器科医とは緊密な連絡をとり、心理療法士・精神科医の関与も大切となる。家族のいる患者の大半は、自宅療法が通常である。自宅療法では看護婦によるケアがあるとはいえ、患者・家族にとって大きな負担となり、解決されるべき大きな問題をかかえている。疾患の進行とともにホスピス・ケアが導入され、緩和療法が必要となる。BiPAPを主体とする呼吸補助器も頻繁に使用される。ただし気管切開による完全呼吸管理は少ない。ALSは最近その研究が進み、一見進歩したかに見えるが、基本的な面でのALSの治療・医療には大きな変化はなく、今後益々の努力が必要と思われる。