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欧米でも、日本でもこれまで多発性硬化症の患者で治療中に妊娠したり、妊娠中に治療の必要があった人々についての正確な研究報告はありません。
基本的には、副腎皮質ステロイドホルモン、いろいろな免疫抑制剤の全てが妊娠中に 母体の血液より胎児へ移行して、胎児に何らかの影響を与えます。その影響は同じ薬でも、母体が摂取した薬の量と飲み方、母体の腎臓や肝臓の状態、胎児の胎生期における年齢などにより違ってきます。
一般的に問題となる主な薬の胎児への作用をあげますと、
たとえば副腎皮質ステロイドホルモンであれば、そのホルモン作用が問題となる。大量に一定期間、移行すると胎児の副腎不全を生じる。
これはブレデイニン以外の全ての免疫抑制剤で動物実験段階で大量に与えると出ている。
ステロイド以外、とくにエンドキサン、サイクロスポリンA、メトトレキセートでより強い。
さて、今述べましたようなことに恐れをなして、妊娠と出産をあきらめるには及びません。上に書きましたことは、かなりの量の薬を長く使ったばあいのことで、普通はこのようなことになるチャンス(奇形などの出る頻度)は少ないのです。どれぐらい少ないかというデータが残念ながら、今のところありません。だから、妊娠するとき、妊娠中にどのような治療を受けるか、は多発性硬化症の患者とその伴侶が、医師とよく相談して、子供の将来についても考慮して自分達で決めるべきことです。
結論からいいますと、これまでほとんどの多発性硬化症の患者は妊娠して正常な子供を正常に出産しています。
しかし、これは主として今まであまり免疫抑制剤などの治療が盛んでなかった時代のことです。 授乳との関係では、多発性硬化症は産後には悪化しやすいので、何らかの治療が必要なこと、また薬が母乳から子供に移行すること、母乳でなくても良い人工ミルクがあること、などを考えますと、あえて母乳を与えるという危険をおかさない方が無難でしょう。勿論、母親が多発性硬化症の緩解期や安定期にあり、薬を飲む必要が無いときは母乳を与えてください。