多発性硬化症はどのような臨床症状を生じるのですか?

多発性硬化症は、身体の動き・バランス・感覚・知能・感情・内臓の動きや知覚など、大変広い範囲を支配する神経系の病気です。この広い神経組織のどこが侵されるかは人によりさまざまで、症状はその侵される場所により決まります。病気の経過もまたさまざまです。欧米人と日本人とでも違いがあります。

視力低下

眼がかすむ、眼がはっきり見えないなどの視力の低下で、片方の眼から始まり、1〜2時間で悪くなったり、数日かかってはっきり悪いと分かる場合があります。

中心の視野が見えなくなり、大きな動くものしか見えないこととか、視野の一部が欠損してよく見えなくなることがあります。

眼の上や奥が痛んだり、眼に軽い苦痛感・違和感があることもあり、頭痛を伴うこともあります。

球後視神経炎や視神経炎では、色視力が減弱しているのに白黒の視力は正常のまま残っていて、まるで白黒テレビを見ているように感じることがあります。

運動障害

歩行障害が多く、一方より始まり両方の脚におよぶ筋力の低下が中心のばあいがよく見られます。

脊髄に病巣があるとしばしば胸や腰・腹部のしめつけるような痛みをともない、尿が出にくくなることもあります。脚の感覚が鈍くなることもあります。手に力が入らないこともあります。

顔の筋肉が麻痺して顔がゆがむ、口の端から水がこぼれる、眼が閉じないこともあります。

片麻痺といって片方の手足の麻痺がでることもあります。話しにくい・飲み込みにくい、脚がつっぱる・硬い・こわばる、平衡感覚が悪くなりふらつく、手が震える、などになることもあります。

感覚障害

感覚がにぶく、分かり難くなる、一枚皮をかぶっているようだ、何も感じない、お風呂に入っても湯加減が分からない、火傷や傷ができていても分からない、しびれる、しめつける、痛む、うずく、冷える、焼け付くように痛むなどさまざまです。ときに顔半分に三叉神経痛という強い痛みがでることがあります。

排尿障害

膀胱の機能は主として尿をもらさないように抑制しておくところに特徴があります。脊髄・橋・大脳のどこが侵されてもおこりますが、脊髄障害によるものが多く、よく脚の痙性(つっぱり)にともないます。尿が出にくい(排尿困難)、尿がでない(尿閉)、直ぐ行きたくなる(頻尿)、夜間に何度も行きたくなる(夜間頻尿)、出るのが分からない、よく漏らす(尿失禁)などです。膀胱の働きが悪いと、尿が知らない間にたくさん貯まっていて、よく膀胱炎をおこします。これは、排尿痛、頻尿、発熱、尿が濁っているなどの症状があります。

  神経因性膀胱に対する対策

性機能障害

男性では、いろいろな程度のインポテンツが見られます。つまり、射精が不十分、射精できない、勃起が持続できない、勃起できないなどです。しかし、これらの問題は、緊張や心配などの精神的な原因や、疲労でもよく見られるので多発性硬化症によるものかどうかという区別は慎重でなければなりません。

女性では、性的興奮をおぼえない、性的満足感がないなどで、妊娠できないということはまずありません。

知的・感情的問題

多発性硬化症の患者さんは病気のはじめには、殆どの人が、うつ的になります。これは、困難な病気の症状に対する心配や不安からくるもので、当然すぎる反応です。しかし、20%の人は病気の進行に伴って、いわゆる多幸的といわれる、あまり物事にくよくよしない性質になります。長年の後に病変の痕が増えて残る場合は、いらいらしたり、物忘れし易くなったり、実際に記憶障害がでたりします。痴呆になるということはまれです。子供や若者の多発性硬化症で、まれにてんかん発作を伴うことがあります。

多発性硬化症の経過

予想がたいへんむずかしく、たいていの症状のピークは発病後1週間以内にあり、症状は2〜3日から2〜3週間で軽快します。数週から数カ月かかって回復に向かう人もあります。

多発性硬化症には、幾つかの病気のタイプがあります。良性型といわれているのは、急性に症状は発症しますが2〜3度でただけで、もう二度と症状がでなかったり、何十年後にまた少し出たりというものです。あまり障害を残さず治ります。

一番多いタイプは再発寛解型で、さまざまな症状をさまざまな時間間隔で、再発し、軽快し、また再発するということを繰り返します。平均的な再発間隔は一年間に1〜2回ですが、人によっては、2〜3年に一度と言う場合もあります。

まれに慢性型といわれ、多少の軽快はあるものの緩徐に進行するタイプがあります。またドウビイック(Devic)型といって、急激に両眼と両脚の障害が来るタイプがあります。

再発を避けるには
再発を防ぐためにインターフェロンβの治験がすすめられていますが、今のところ再発を避ける確実な方法はありません。しかし、再発の誘因としては、疲労、感染、過労、ストレスなどがあげられています。

風邪を引かないように、過労にならないように生活のリズムを調節しましょう。

妊娠、出産は多発性硬化症の再発には関係しないとされていますが、出産後の産褥期に再燃率が高まるので出産後は育児、家事などで過労にならないように特に注意が必要です。

  


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