多発性硬化症の治療はどうするのですか?

  1. 急性期の治療

    多発性硬化症の病変が強くならない内に、出来るだけ早く治療をして、神経細胞やその突起の軸索(アクソン)が壊れるのを、最小限にくい止めます。

  2. 慢性期の治療

    慢性期でも、再発が出来るだけ起こらないように再発の予防を試み、起これば直ちに治療することは、急性期と同じです。ある程度症状が進んで、後遺症がある場合は、リハビリを常に行い、残っている神経細胞とその突起を刺激し学習させます。また対象療法として、痛みやしびれを減らしたり、筋肉のつっぱりを押さえて動きやすくしたり、尿を漏れにくくしたりします。既に神経の機能の回復ができなくなった部分にたいしては、車椅子、杖など装具を利用して、生活しやすいように助けます。

  3. 再発回数の軽減と発症の予防

    最近では、この目的で弱い免疫抑制剤を再発が無くても持続的に飲んだりします。また、再発は風邪や疲労、ストレスの多い時に、起こりやすいので、これらにならないように注意します。つまり、栄養・睡眠をとり、うがい・手洗いを励行し、心の平静などに心がけることです。

多発性硬化症の薬物療法

神経内科の専門医が多発性硬化症の治療を計画するときは、患者さんの病気の型、病気の勢いや重さによって決めます。多発性硬化症では無症状でも病気は活動していて徐々に進行していることもあります。これから述べる多発性硬化症の薬物療法は、その効果がまだ科学的に充分には確立していないものも含みます。今後これらの治療法を多くの患者さんにたいして二重盲検法で行い、その治療の効果や薬の適切な飲み方を決める必要があります。
  1. 副腎皮質ステロイドホルモン

    正常な体に誰にでもあるホルモンで、副腎と呼ばれるお腹の中の臓器から分泌されています。浮腫などの炎症をおさめ、免疫反応を抑える作用がありますから、自己免疫病やアレルギー病によく使われます。

  2. インターフェロン(IFN)

    IFNは人の白血球や繊維芽細胞より由来し、α(アルファ)型、β(ベータ)型などがあります。多発性硬化症の患者の病巣の発生に関係のある低下したサプレッサーT細胞を増加させてその活性を亢進させたり、マクロファージ(大喰細胞)より産生されるサイトカインのTNF活性を下げて、病気の勢いを軽快させます。

    これまで再発と寛解を繰り返す型の多発性硬化症の患者さんに、バイオで作られたリコンビナントIFNα を一日おきに筋肉に注射したところ、6カ月後には再発の回数が減少してMRIで見ると病巣の改善があり、脳・脊髄液中の検査データも改善したことが知られています

    。   またリコンビナントIFNβは再発寛解型の多発性硬化症の患者さんに二重盲検試験で投与されたところ、再発の回数が減少して、MRI病巣の改善がみられています。しかし既にある障害度の改善はありませんでした。リコンビナントIFNβは多発性硬化症の治療薬として、米国FDA(政府薬務局)に3年前に承認されて現在多くの患者さんに使われています。IFNβには、1aと1bがありますが、大腸菌で作ったものをb-1bと言い、日本で再発予防に使用されているものは、β-1bです。

    副作用ははき気、肝障害、発熱、風邪症状、疲労感、注射した場所の痛み、不整脈、アレルギー、頭痛、鬱症状です。漢方薬の小紫胡湯と併用すると肺線維症がでやすいので、漢方薬は飲んではいけません。風邪症状は数回治療を続ける内に殆どの人では治まります。

    インターフェロン療法とは(医療従事者向け)

  3. 免疫抑制剤

    免疫抑制剤は、副作用などにより副腎皮質ステロイドホルモンが飲めない、またはその効果が無い時や多発性硬化症の再発寛解型で再発が多く重症化しそうな人や、慢性進行型で神経障害が進行する時に飲みます。この薬は一般にはTあるいはBリンパ球の核酸代謝に作用して、リンパ球が分裂増殖するのを抑え、結果として抗体量を減らしたり、免疫反応を抑えます。ほとんどの免疫抑制剤は、リウマチなど他の自己免疫疾患の治療にも使われています。

    多発性硬化症には、アザチオプリン、サイクロホスファミドがよく使われていますが、最近では メソトレキセート、サイクロスポリンAも外国では使用されていて、病気の進行が治療中は止まっているとの報告があります。

    免疫抑制剤には、副作用として骨髄抑制(白血球の減少、貧血、血小板減少、出血性素因など)、易感染、肝臓、腎臓、膀胱、胃腸障害などがあります。易感染(細菌などに感染し易い)については、前の副腎皮質ホルモン剤の項で述べてあります。他の薬との併用には、骨髄抑制にたいして厳密な注意が必要なので、医師による血液・尿などの検査を頻繁に受ける必要があります。これらの薬は効果が出るまでに3カ月から6カ月以上かかりますので、あせらず飲み続けることが必要です。副作用が出ないような量を見つけてもらって調節して持続的に使用することが大切です。

    アザチオプリンでは、肝障害や骨髄障害が主たる副作用です。サイクロホスファミドは、骨髄抑制の他に、出血性膀胱炎、脱毛、性腺機能低下などを起こす可能性があります。サイクロスポリンAは腎障害が中心です。免疫抑制剤を飲んでいるとき心臓病や腎臓障害のときに飲む利尿剤(ラシックス)、痛風のときに飲む抗尿酸剤(ザイロリック)、高コレステロール血症のときに飲む抗高脂血剤(アモトリール、シンレスタール、ロレルコ))、消化性潰瘍治療薬(ガスター)の中にも骨髄抑制作用のあるものがあり、免疫抑制剤と併用されるときは、慎重でなければなりません。特にザイロリックとアザチオプリンは併用できません。

    慢性動脈閉塞症や虚血性脳血管障害に使われる抗血小板剤(パナルジン)も骨髄抑制に注意が必要です。 免疫抑制剤は副作用がでて、投薬を中止してもその作用は暫く(2ー3カ月)持続または進行することがあります。油断して血液検査を受けることを怠けないようにして下さい。

  4. 新しい薬

  5. 対症療法薬
    病気の機序に作用して病気を起こりにくくしたり、抑えたりする薬以外に、多発性硬化症にによって生じたいろいろな症状に対して、対症療法が行われます。

多発性硬化症のリハビリテーション 



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