合併症にはどんなものがありますか?

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの死因は左心不全が10ないし15%、肺胞低換気による呼吸不全が80%程度です。2つの合併症共に筋肉の変性・萎縮によって引き起こされます。左心不全がでてくるのは13歳から17歳頃です。胸のX線検査により心陰影拡大が認められます。心電図には特有の変化はありません。治療はジギタリス剤投与、各種利尿剤投与が行われてきました、一時的には効果があるのですが長期となると成績は芳しくありません。最近では日本でACE阻害剤という薬が試験され良い結果を得ました。遺伝子異常部位と左心不全発生の関係はありません。

呼吸不全は呼吸筋の変性と脊柱変形により引き起こされます。呼吸障害の程度はデュシェンヌ型筋ジストロフィーの呼吸障害度に示すように分類されます(石原,1982)。

筋ジストロフィーの呼吸障害度分類
潜在性呼吸不全期呼吸不全初期呼吸不全中期呼吸不全末期
45Torr>PaCO250Torr>PaCO2≧45Torr60Torr>PaCO2≧50TorrPaCO2≧60Torr

動脈血炭酸ガス分圧が60トール以上の呼吸不全末期でなんらかの人工呼吸器治療を開始するのが通常です。最初は夜間睡眠時のみに呼吸器治療を行えば十分であり、なるべく気管切開といってのどに穴をあける手術を行わないで治療を開始するのが原則です。第一に選択される方法は鼻マスクによる陽圧人工呼吸法(NIPPV)である。鼻マスク圧迫により鼻根部に潰瘍が生じやすい事が欠点ではありますが、優れた方法です。

人工呼吸器使用中の写真

鼻マスクによる人工呼吸器治療

これらの呼吸器でも呼吸困難が改善できない場合にはじめて気管切開を考慮します。気管切開を行っても、ポータブル呼吸器を使用すれば在宅でも人工呼吸器治療が十分に可能であり、NIPPVを施行しながらの旅行も行われるようになりました。

 最近、出血性肺梗塞の合併が問題となっています。筋ジストロフィーのほとんどの症例で大小の肺梗塞が認められる事が判明してきました。梗塞巣は肺にとどまらず、しばしば腎臓に、そしてまれには脳にも認められます。この梗塞の原因として考えられる血液凝固系異常が高頻度で存在する事が明らかにされつつあります。大きな肺梗塞では即死する症例もあるので注意を要します。

 消化器系では、急性胃拡張が問題となります。症状は頻回の嘔吐です、放置すれば数日程度で脱水によるショックにて死亡してしまいます。鼻から胃に管を入れて、胃の内容を持続的に吸引しながら電解質を含む点滴をすれば必ず救命が可能です。



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