デュシェンヌ型筋ジストロフィーは19世紀に記載された筋力低下を主症状とする疾患です。イギリスでは1852年にメリオンが詳細に記載しており、おくれて1868年にフランスのデュシェンヌが報告しました。現在ではデュシェンヌの名前が残されていますが、彼は臨床神経学に様々な方面で偉大な足跡を残した神経学者であったことから当然のことかもしれません。19世紀から20世紀のはじめにかけて活躍したドイツのエルプは1914年に長大な論文を書き、この中で彼は病理学的に同じ様な所見を呈する疾患群をまとめて進行性筋ジストロフィーという名前を与え、筋萎縮という言葉も定義しました。彼によれば筋萎縮(muscular atrophy)は脊髄にある運動神経の異常によって(神経原性といいます)二次的に筋肉がやせた状態であると定義したのです。これに対して神経の異常がなくて筋肉がやせる(筋原性という)のは筋のやせ(muscular wasting)と呼ばれます。日本語では筋原性のやせも含めてすべて筋萎縮と呼ばれています。
筋萎縮症は脊髄の運動神経が冒された神経原性疾患群であり、これに対して神経原性でない原因で筋肉の異常を来している疾患群をミオパチーと総称します。ミオパチーにはたくさんの疾患が含まれています。進行性筋ジストロフィーはこのうち最も患者数が多く、遺伝性であり、進行性筋力低下をきたすという2つの条件を満たすミオパチーです。筋ジストロフィーは遺伝形式で分類されています。
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筋ジストロフィーのうち最も数の多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、性染色体劣性遺伝といって男だけに発症するタイプであることは早くから知られていました。デュシェンヌ型やベッカー型筋ジストロフィーは別名仮性肥大型筋ジストロフィーとも呼ばれます。仮性肥大というのは筋肉が正常よりもたくましく肥大してはいるが、実際の筋力は正常より減弱しているという意味なのです。
ドイツのベッカーは、デュシェンヌ型と同じように性染色体劣性遺伝型ではあるが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは異なり良性の経過をとる仮性肥大型筋ジストロフィーが存在することを1955年に記載しました。それ以来この病気は良性デュシェンヌ型筋ジストロフィーとも呼ばれてきました。近年デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子が解明されて、ベッカー型筋ジストロフィーも同じ遺伝子の異常で発現することが明かとなり、両者には経過の上で悪性(デュシェンヌ型)と良性(ベッカー型)という違いはあるものの本質的には同一疾患であると考えられるようになってきています。そのために最近ではデュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィーとして一括して語られるようになっています両者の違いは、筋ジストロフィー遺伝子の障害され方が違うのです。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは筋ジストロフィー遺伝子により作られるタンパク質のジストロフィンが消失しますが、ベッカー型では異常ながらも蛋白質が形成されるので良性の経過をたどることができるのです。
筋ジストロフィーの分類
遺伝形式の解説
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