常染色体劣性遺伝型です。一番患者数が多いのは日本で見つかった福山型先天性筋ジストロフィーです。第9番目の染色体(9q31-q33)に遺伝子が存在することが日本で発見されました。この病気には中枢神経系(脳や脊髄)の神経細胞にも異常が見られ、知能低下やけいれん発作などが見られます。この病気で足りない蛋白質はfukutinと名付けられています。
先天型ですから生後まもなく病気が見つかります。通常は一生歩けません。小さい時期から食べたものが肺に入り、肺炎を起こします。肺炎が寿命を決定するといっても過言ではありません。
1994年に発見されたメロシン欠乏症も先天型筋ジストロフィーの一つです。知能低下やけいれん発作は見られません。進行は福山型よりもゆっくりしています。メロシン陽性型では乳児期に発育の後れはありますが、90%以上の人が歩けるようになります。成長してから歩行不能となることもありますが、50歳過ぎになっても元気に仕事の出来る人もいます。
福山型先天性筋ジストロフィー患者
顔面の筋肉もおかされるために独特の顔つきとなります。
<遺伝子型をもとにした先天性筋ジストロフィーの最近の分類>
| 病型 | 遺伝形式 | 遺伝子座 | 遺伝子蛋白 |
|---|---|---|---|
| 福山型 | 常染色体劣性 | 9q31-q33 | fukutin |
| メロシン欠損症 | 常染色体劣性 | 6q2 | laminin alpha 2 chian |
| インテグリン欠損症 | 常染色体劣性 | 12q13 | integrin alpha 7 |
| ウールリッヒ型 | 常染色体劣性 | 不明 | 不明 |
この病気も常染色体劣性遺伝型が多いのです。最近ではこの病気が細分化され、現在最も研究が活発になされている疾患です。近い将来この筋ジストロフィーの分類が全く変わっていくことが予想されています。この型はたくさんの疾患のよせ集めなのです。以前には他の型ではないとこの肢帯型筋ジストロフィーと診断しました。
<遺伝子型をもとにした最近の分類>
| 型 | 亜型 | 遺伝子座位 | 遺伝子蛋白 |
|---|---|---|---|
| 常染色体優性型 (LGMD1) | LGMD1A | 5q22-q34 | myophylin |
| LGMD1B | 1q11-21 | 不明 | |
| LGMD1C | 3p25 | caveolin-3 | |
| LGMD1D | 6p23 | 不明 | |
| LGMD1E | 5q31 | 不明 | |
| LGMD1F | 7q | 不明 | |
| 常染色体劣性型 (LGMD2) | LGMD2A | 15q15.1-q21.1 | calpain-3 |
| LGMD2B(*) | 2p13 | dysferlin | |
| LGMD2C | 13q12 | gamma-sarcoglycan | |
| LGMD2D | 17q12-q21.33 | alpha-sarcoglycan | |
| LGMD2E | 4q12 | beta-sarcoglycan | |
| LGMD2F | 5q33-q34 | delta-sarcoglycan | |
| LGMD2G | 17q11-q12q | 不明 | |
| LGMD2F | 9q31-q34.1 | 不明 | |
| LGMD2J (**) | 2q31 | titin |
* 三好型遠位型筋ジストロフィーも同じ遺伝子座で、同じ遺伝子蛋白(dysferlin)の異常を持っています。
**脛骨筋ジストロフィー、遅発性心筋症も同じ遺伝子座、遺伝子蛋白(titin)の異常を持っている。
日本で発見された型です。遠位筋という手足の先の筋肉が初めに侵されます。常染色体劣性遺伝型で、遺伝子は第2染色体(2p12-14)にあり、欠損蛋白質はdysferlinと名付けられています。
常染色体優性遺伝型です。従って両親のどちらかが同じ病気であることが多いのです。
顔や肩胛骨の周囲の筋が特に障害されます。第4番目の染色体のはじ(4q35)に遺伝子があることが解りました。この病気でも異常となる蛋白質についてはまだわかりません。時に呼吸不全となり人工呼吸器治療が必要となることがあります。

顔面肩胛上腕型筋ジストロフィーでは肩胛骨(貝殻骨)が突出して見えます。
以前、「緊張性筋ジストロフィー」と言われたこともあるこの病気は常染色体優性遺伝型で第19染色体(19q13.3)に遺伝子異常があり、(CTG)n trinucleotideを生じています。この遺伝子はミオトニンカイネースという酵素を作っていますが、(CTG)n trinucleotideのためにCUG expansionを生じたmRNAが核から細胞質に出れなくなって細胞障害を生じてくると考えられています。
臨床症状で、これまで説明してきた筋ジストロフィーと違うところは、手足の筋力の低下の他に筋強直症が見られることと、前頭部が禿げ上がっていること、白内障や心臓の異常など多臓器の障害が見られることです。筋強直症は物を握ったら放しにくいという症状です。
成人に見られる筋肉疾患では最も頻度が高いです。
白内障は進行すれば眼科で手術が必要になります。不整脈や脈が遅くなると心臓に電極(ペースメーカーといいます)を入れて治療することもあります。呼吸不全を生じることが多いのですが、この病気では呼吸筋の萎縮よりも、脳幹部にある呼吸中枢異常の関与が大きいために一般の筋ジストロフィーのように急速に呼吸不全が悪化することはありません。
また、頻度は少ないのですが、上記の強直性筋ジストロフィー(DM1)とは異なるタイプ(DM2)も知られています。DM2は、第3遺伝子(3q21.3)の異常で(CCTG)n tetranucleotideを生じています。このtetranucleotide expansionは平均5,000(75-11,000)という巨大なもので、やはりmRNAのCCUG expansionを生じ、細胞死をきたします。
DM2では、知能障害はないと言われています。
先天性筋強直性ジストロフィー患者
上唇がテント状になっているのが特徴です。