筋ジストロフィーの症状は?

デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィーの発病時期を確定するのは、困難です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの胎児筋を抗ジストロフィン抗体で免疫組織化学的染色してみると、当然のことではあるのですが筋細胞膜にはジストロフィンが欠損しておりすでに子宮内で発病していることとなるからです。出生後1年以内には病気は気づかれないのが普通です。一人歩きはやや遅れるものの大多数は1年6ヶ月頃までに歩行可能となります。

歩行開始後も駆けることができない、ソファ程度の高さからも飛び降りることができない、倒れやすい、階段の昇降が健常児に比べぎこちないなどの症状が出現してきます。注意深いお母さんですと生後2歳には異常に気づきますが、おそいと4歳頃に診断されることもあります。5歳までにはほとんどの患者で筋ジストロフィーの診断が下されます。

ふくらはぎの仮性肥大(正常児よりも肥大しているように観察されるが、実際には筋力は低下していることをいいます)は2歳ごろより認められ、触れると硬いのです。床より立ち上がる際に両大腿部に手をつく、これを登攀性起立と呼びます。

登攀性起立の写真
筋ジストロフィー患者にみられる登攀性起立

両足を広げて、下腹部を前に突き出して起立姿勢を保ち、腰を振るようにして歩くがこれを動揺性歩行といいます。登攀性起立も動揺性歩行も腰の筋の筋力低下を表す症状で筋ジストロフィーに特有なものではありません。

4歳頃には発育が盛んになるために一時的に筋力が増強して症状も軽くみえるようになり両親が安心します。しかし、小学校入学時頃から歩行が目に見えてぎこちなくなります。階段の昇降時には片方の手で手すりにつかまることが必要となり、やがては両手で手すりにつかまるようになります。次には階段昇降ができなくなり、床からの起立が不能となります。次には椅子からも、立てなくなります。平均9歳で歩行が不可能となり、車椅子上生活となってしまいます。

車椅子生活に移行すると、肥満が出現したり、脊柱側弯症(背骨が曲がること)が急速に進行する症例が多く認められるようになります。車椅子に乗車直後は四這いやいざりは可能ですが、これもやがて不可能となり、進行すれば座ることや車椅子の操作も不能となります。

やがては、後述する左心不全や、呼吸不全でほとんどの患者が死亡してゆきます。現在のわが国のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの死亡平均年齢は20歳と考えられています。
ベッカー型筋ジストロフィーの発病時期も確定は難しいのです、発症は早くても5歳以上です。従来は25歳までに発症するとされてきました。しかし、最近では60歳代の発症例も知られてきており、必ずしも25歳までの発症とは言い切れなくなってきました。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは平均9歳で歩行能力を失うのですが、ベッカー型筋ジストロフィーは15歳以下で歩行能力を失うことはないとされています。

デュシェンヌ型と比較すると左心不全で死亡する例が目立ちますが、これはベッカー型では長期に歩行が可能で心筋に対する負担が大きいためと推測されています。筋ジストロフィー遺伝子異常症はジストロフィン異常症とも呼ばれています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーには軽度の知能低下を伴う例が少なくなく、平均知能指数は健常児の86%程度といわれてきました。中枢神経系の神経細胞膜にもジストロフィンが存在しており、ジストロフィンの欠損が神経細胞の機能異常を引き起こす可能性も十分考えられるのです。これまでの研究では遺伝子異常部位と知能の関係も無いとする報告が多いようです。


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