筋ジストロフィーの治療は?

 社会的生活環境の整備、栄養状態の改善や強力な抗生物質の出現などと相俟って後に述べる合併症治療法の改善により現在ではデュシェンヌ型は平均20歳が死亡年齢であるとされ従来に比べ大幅に延命できるようになりました。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは早朝の動脈血液ガス分析で炭酸ガス分圧が60トール以上になると、治療せずに放置すれば平均180日で死亡してしまいます。しかし、呼吸器治療を開始すれば、治療効果はめざましく10年以上の延命も珍しいことではなくなりました。しかし、左心不全が発症すると治療は困難です。



  1. 筋芽細胞移植は無効でした。


    1989年にイギリスのパートリッジたちはデュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデル動物であるmdxマウスと免疫機構を欠くヌードマウスを交配しmdxでありながらヌードマウスであるという特殊なマウスを作りだし、これに正常マウスから得られた筋芽細胞注入実験を行い高率の筋細胞にジストロフィンを作り出すことに成功したと報告しました。ヒトにおける治療にも成功するような希望を与えましたが、アメリカやカナダで行われた筋ジストロフィー患者での筋芽細胞注入治療は筋力増強にはつながらないと結論されています。これは注入された筋芽細胞やこれが分裂してできあがる筋細胞は患者にとっては異物であり拒絶反応で排除されてしまうためです。

  2. 遺伝子治療の現状と将来は?

    ウィルスに遺伝子を組み込み筋細胞に感染させてジストロフィン蛋白質を作り出そうという試みはフランスではじめて行われました。彼らはアデノウィルスDNAに軽症のベッカー型筋ジストロフィーから得られたジストロフィン遺伝子(ミニジストロフィン遺伝子といわれます)を組み込み生後間もないmdxマウスの筋に注射し感染させることにより高率の細胞にジストロフィンを発現させることに成功しました。アデノウィルスに挿入できる最長のDNAの長さはジストロフィンのDNAの半分の長さにしかすぎませんので、正常ジストロフィン遺伝子の全長をウィルスに挿入することができず、ヒトに応用してもデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者が軽症のベッカー型筋ジストロフィーに転換するにすぎないこと、彼らの実験が生後間もないマウスで行われたこと、拒絶反応により繰り返しの注射ではウィルスが死滅してしまうこと、遠隔成績で発ガン性などの危険性がないという保証が無いことなどが問題点としてあげられていいます。しかし、この方法は筋ジストロフィーの根本的治療法ですから今後の研究の飛躍が期待されているところなのです。

  3. 副腎皮質ホルモンが有効です。

    近年行われている副腎皮質ホルモンの投与は病気進行の鈍化だけではなく、筋力増強も望めるという成績が発表されるようになり注目を浴びています。1987年以降、アメリカを中心として続々と治療結果が発表され、1990年代に入り副腎皮質ホルモンの効果については肯定的な趨勢となってきていますが、たくさんの副作用が考えられるためか日本では行っている医師は多くありません。ステロイドの投与量については、少量投与と大量投与では大量投与の方が効果があったとされています。1993年イギリスからプレドニゾロン0.75mg/kg体重を月に10日間投与する方法が報告されました。この方法ではステロイドの副作用もほとんど出現しないため筆者もこの方法で投与を行っています。

    副腎ステロイドがなぜ筋ジストロフィーに効果があるのかは未だ分かりません。


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