口腔内の清潔の問題

(神経難病、脳卒中などで開口・嚥下・意識障害のある患者さんのための口腔ケア)

口腔清拭の写真寝たきり状態になったり、経口摂取が困難になると、唾液の分泌が減少し、口腔内の自浄作用の低下をきたしやすくなり、口腔内に細菌が繁殖し、容易に細菌が気道へと吸引されやすくなります。口腔内の不潔なことが、嘔吐による胃内容物の誤嚥、嚥下障害による食物や唾液の誤嚥などとともに嚥下性肺炎の原因となります。従って、神経難病や脳卒中によって嚥下障害、開口障害、あるいは意識障害になった患者さんでの口腔の清潔保持ということはは看護の分野でも欠かせない重要なケアの1つとなります。
また、キザミ食、トロミ食、粥食などは何れも歯には悪く、そのうえ薬剤の副作用も加わり口腔の自浄作用が低下し、歯は数日でドロドロ、ヌルヌルとなりますので、口腔ケアは欠かせません。
このように清潔の意義は大きいのですが、個々の障害の程度により手技も異なり、困難も多いのが現状です。一方、在宅療養患者が増えている中で、家族への指導も重要となっています。

口腔ケアの意義・目的

口腔内の細菌の繁殖を抑え、口内炎、嚥下性肺炎などの二次感染を予防します。
う歯(むしば)の発生を予防し、歯肉を強化することにより、歯肉炎、歯槽膿漏の予防することが重要です。 気分をさわやかにします。また、それによって味覚・感覚・嚥下にも影響し、食思が増進します。
基本的手技

歯ブラシでのブラッシング→洗浄→清拭

* 嚥下障害の強い方でも、最低限、歯ブラシでのブラッシング→清拭が必要です。

体位

嚥下障害のある方の体位は、

30度仰臥位頚部前屈位(最も誤嚥しにくい体位)がよい。
口腔内を洗浄するに当たり、頚を横に向けるか、側臥位をとらせる。

脳卒中などで片麻痺のある場合、

仰臥位で行わざるを得ない場合には、上下肢ともに健側を下にした側臥位の状態で歯みがきを行う。

半座位の場合(側臥位を取れない場合)は、顔を患側に向けてブラッシングを行う。

開口を維持できない方

割り箸の先にガーゼを巻き付けて奥歯のところでかませ、その状態で歯ブラシを当てます。そうすれば口を開けたままの状態を維持できますし、歯の裏もよく磨けます。一般に障害児のブラッシングのとき によく行われる方法ですが意外と効果的です。(磯和均歯科医のアドバイスによる)

口腔清拭を行う時期

経口的に食事の取れる方:  毎食後と眠る前
経口的に食事の取れない方: 朝と眠る前
必要物品

ブラッシングのための歯ブラシ、電動ブラシ
相手に合わせて選択するが、ナイロン性で、硬さは軟らかめから普通のもがよい。

*炎症のある人、過敏な人は、刺激の少ない軟毛ブラシから普通)
*舌苔のある人は、軟毛ブラシか、歯ブラシにガーゼを巻いたもの

洗浄

コップ、ガーグルベース、吸い飲みなど
含そう水
含嗽水としては次のようなものが用いられる。
微温湯
イソジンガーグル10倍液
2%食塩水
0.5%クエン酸水
2倍希釈オキシドール
1.5%りんご酢
口内が乾燥しやすい時には、クエン酸、りんご酢などの酸性液を持ちいると口腔ケア後に唾液の分泌を促し、口内がアルカリ性に傾いて細菌の繁殖を防ぐ。
その他
誤嚥のある人には、吸引器、吸引カテーテルを用いる。
方法

  • 麻痺は多少あっても開口できて、うがいのできる人

    必要物品
    歯ブラシ、含嗽水(イソジンガーグル)、コップ、ガーグルベースン、タオル
    1. 体位は半座位か、側臥位にする。
    2. 歯ブラシは、使用できるが、自分で磨けない人には、まんべんなく磨いてあげる。
    3. 膿盆を用意して、すすぎ水を受ける。

  • 開口できるが、うがいの出来ない人

    必要物品
    歯ブラシ、含嗽水(イソジンガーグル)、吸い飲み、ガーグルベースン、綿棒(イソジンガーグル液を含ませる)
    1. 体位は、側臥位にする。
    2. 誤飲予防で、ギャジアップ45〜60度にする。
    3. ブラッシングをする(歯ブラシにイソジンガーグル液をつける)
    4. ガーグルベースンを当て、吸い飲みで洗い流す。または、綿棒でふき取る。(横を向いた下側の口角を指で押し広げ、上側より吸い飲みで洗い流す)

    *吸引チューブがついていて、汚れを直接ブラッシングすると同時に吸引できる簡便な歯ブラシがあります。
    吸引歯ブラシ ハッピー(http://www.fine-revolution.co.jp/syohin/f_syohin.html)

  • 開口困難があり、うがいも全く出来ない人

    必要物品
    歯ブラシ、含嗽水(イソジンガーグル)、綿棒(イソジンガーグル液を含ませる)
    1. 体位は側臥位とする。
    2. 誤飲予防で、ギャジアップ45〜60度にする。
    3. ブラッシングをする(歯ブラシにイソジンガーグル液をつける)
    4. 綿棒でふき取る

    *開口困難な方には照明器つきの開口器を用いると便利です。
    照明開口器ホタル(http://www.fine-revolution.co.jp/syohin/f_syohin.html)

  • 誤飲の危険性の高い人

    • 吸引器のある方

      ブラッシングの後、吸引チューブを下側の口腔内に入れておき、吸い飲みで水を注入て洗浄しながら、同時に吸引を行うが、次に20〜30倍のイソジンガーグルで再度、同じように洗浄、吸引を行う。

    • 吸引器のない方

      1. ウオータピック、ピジョン(プラスチックの哺乳びんの先にスプーンが付いたようなもので、スプーンに沿って水を流し出すことが出来る)を使用する方法

        体位は、90度で顔面を前屈させて、ガーグルベースンを顎に当てて、ウオーターピックで洗い流す。

        * ピジョンでは、哺乳びんのようになっている先に歯ブラシが付いたものもあります。

      2. ウオーターピックがない場合

        • デスポの注射器(吸引カテーテルは30〜50 cmの長さにしたものを接続する)を利用する方法
          (やり方はウオーターピックと同様)

        • 綿棒を使用する方法

      綿棒の写真
      側臥位で、綿棒をイソジンガーグル液で浸し、ブラッシングの後で、口腔の中を十分にふき取る。





      左は市販の特大綿棒(メンテイップ)、開口困難の患者には使用できない。

      右は国立療養所犀潟病院で使用中のもの。割り箸を利用して作った自家製の綿棒で、綿球の部分の直経が1 cmくらいと小さく、開口困難の患者にも使用できる。

    • 舌苔のある人

      1. 舌を引き出すようにして、イソジンガーグル液で浸した軟毛ブラシで、舌をブラッシングする。
      2. 口にたまった流水を吸引するか、綿棒で口腔内をふき取る。
      3. 口腔内を乾燥させないようにマスクをする。

            舌苔とは

    • 義歯の手入れ

      1. 歯ブラシで手入れする。
      2. 義歯専用の薬液に漬ける。

        外した義歯はガーゼやテイッシュで包んで置いてはいけません。うっかり捨てたりして紛失のもととなります。

訪問歯科診療制度

地域によっては、地区の歯科医師会が中心となって身体障害者のために訪問歯科診療を行っているところがあるので、必要があれば保健所に問い合わせると良いでしょう。

歯科からみた口腔ケアのアドバイス(口腔ケアブラッシングの仕方
歯科からみた口腔介護について(やや専門的なお話)


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